食介護マニュアル3







































































































第3章:おいしく食べる脳の機能

流れをつくる5つのステージ

 おいしさはどこで感じるか?

食べるための脳の機能はどのようにして働き、おいしさはどこで感じるのでしょうか。

人間の脳の働きは入力と出力から成り立っていると言われています。入力は五感から取り入られ、出力は筋肉の運動となって働きます。

食べることで幸せを感じる脳の伝達経路は複雑で、まだまだ解明できるものではありませんが、食べ物の認知から、おいしく感じるまでの流れについて、脳への入力期、出力期、至福期の3期を5ステージに分け、総合的かつ簡略的にまとめてみます。

なお脳の構造については本連載第1回(7月号)で説明しているので、併せてご参照下さい。

 食欲が生まれるプロセス

□入力期(感覚伝導路系)

認知ステージ

目、耳、鼻から脳神経を介して視覚、聴覚、嗅覚が働き大脳新皮質の視覚野、聴覚野、嗅覚野で食物を認知することから始まる。しかし、まだ「食べたい」という欲求はない。

食欲感知ステージ

認知情報が大脳辺縁系へ伝達し、食べたいと思う本能、情動に変わる。その時、大脳辺縁系内では海馬で過去に食べた記憶を思い出し、扁桃核では好きだと選択し、視床に伝達をする。



一方、視床下部では空腹状態を血液中の血糖値から摂食中枢、満腹中枢が働き、お腹が空いたという刺激となり視床に伝達をする。

 心地よい刺激がおいしさに

出力期(運動伝導路系)

運動伝達ステージ

2系統の情報を視床で整理して、「大脳新皮質」の前頭連合野に送られる。前頭連合野ではそれらの情報をもとに、どのような食行動をするか決定し、運動野に各筋肉を動かす指令を送る。そして運動野から、錐体路、錐体外路を経由して脊髄や小脳で運動神経や骨格筋、咀嚼中枢、嚥下中枢を介して食べる行動を開始する。

味覚ステージ

手、腕、指などによって運ばれた食物は口腔内に取り入れられる。食塊は咀嚼により脳へ心地よい刺激を伝えながら、舌、咽頭などに存在する味覚細胞(味蕾)や感覚細胞によって味や温度、硬さが判断され、味覚野、体制感覚野に送られる。そして過去の記憶とともに食物からのおいしさの情報が満たされる。

「おいしい」が至福に変わる

至福期

至福ステージ

食物から得られた情報と周りの環境の情報が集積して、おいしく感じる条件となり、脳幹の基底核から発信する神経回路に乗って、神経伝達物質であるドーパミンを発しながら視床下部、海馬、扁桃核、側座核を経て快楽情報を前頭連合野に伝達「おいしい」「幸せ」という至福を感じていく

これらの流れを、私たちの脳は瞬時に判断し、喜びや生きがいへと変えていきます。一口の食事がいかに大切かが伺い知れるでしょう。

この流れを把握することにより、要介護者の食事動作のなかから、どのステージ、どの部分に問題があり、どのように対応していかなければならないかが伺い知れるでしょう。

この流れを把握することにより、要介護者の食事動作のなかから、どのステージ、どの部分に問題があり、どのように対応していかなければならないかが推測できるのです。