食介護マニュアル1



























































第1章:食介護とは

医学的根拠に基づき食事の問題解決を支援

 一生口からおいしく食べる

介護の基本は食事と入浴(清潔)と排泄の3本の柱があります。しかし食事介護については他の2つよりは多くの問題をかかえているようです。

たとえば、 食べやすくするために普通食からきざみ食にすることがあります。このことで、本当に食べやすくなるのでしょうか。

舌の片側に麻痺がある場合では、食塊形成の段階で、きざみ食は口のなかでばらばらに拡散してしまい、一塊にすることができづらく、むせりや誤嚥の原因となってしまうことがあります。そのためにも、摂食嚥下障害者の口腔機能障害の把握と、各人にあった食事摂取方法が必要となってきます。

そこで「食介護」とは、今まで受けてきた食事介助技術手法を、食べる側の目線に立って、「食材の見直しから摂食嚥下までの一連の食動作を医学的見地から支援し、食文化・食習慣なども含めた要介護者の食環境を包括的に理解・把握し、一生口からおいしく食べるための介護」と位置づけしました。

介護保険制度下で、保健・医療・福祉のネットワークが問われているなか、この問題に関しては  さまざまな職種の方々の参加によってネットワークを構築し、新しい分野「食介護」として取り組んでいかなければならないと考えています。


 食事の問題点を把握するために

介護保険におけるケアプラン作成の時、食事問題の聞き取りで、「食事を食べてますか?」と質問するケアマネージャーがいます。しかし、この質問に対しては、「食べています」といったような当たり前の答えが返ってくるだけでしょう。

これでは、食事の問題点を把握することはできず、正確なケアプランを作成することはできません。

そこで筆者は、食事の問題点を正確に聞き出すに「ご家族と同じ食事をしていますか?」と質問するように指導していいます。そのことによって、食事を軟らかくしているとか、揚げ物は食べないとか、むせるとか、そこから得られる情報は咀嚼・嚥下障害をはじめとし、全身疾患や食事環境の問題まで踏みこむことができるからなのです。

 食事こそケアプランの柱

ケアマネージャーはケアプランの作成に常に頭を痛めていることと思いますが、冒頭でお話したように、介護保険の基本は食事、入浴(清潔)、排泄の手間をどのように支援していくかであり、その基本にのっとったケアプラン作成をして行かなければなりません。

そこで人間が生きていくための生命維持管理を優先順で考えると、入浴や排泄よりは食事の問題をまず始めに把握しなければなりません。すなわち、ケアプラン作成のアセスメントは、いつ、誰と、何を、どれくらい食べているかを聞きとることから始めるべきなのです。

月曜日の朝、昼、夕の食事内容、火曜日の・・と、一週間分の状態を把握し、摂取エネルギーが不足していないかをアセスメントし、ケアプランに反映させていきます。そして、その後に排泄、入浴(清潔)サービス計画へと移ります。

このように食事に関しての介護はとても重要なこととなります。「食介護」はこのような食困難な問題を医学的根拠に基づいて支援しています。